心を込めて書いた文章が、読者の心を動かせないのはなぜか。
多くの書き手が直面するこの無力感の正体は、情報やテクニックの不足ではありません。
その根本にあるのは、人間の感情が動く「原理原則」を押さえられていないという、ただ一点の事実だけです。
この記事では、脚本家・永妻優一氏の著書『人の心に響くストーリーの書き方』を、、日頃私たちがつかう言葉を「人を動かす武器」に変えるための戦略書として読み解いていきます。
本書が教えてくれるのは才能に頼ることなく、誰にでも再現可能な「物語の型」です。
この記事を最後まで読めば、ストーリーが「感情を揺さぶり、価値を注入し、人を動かす」ための具体的なプロセスがすべて分かります。
もしあなたが「反応が取れない」という無力感から解放され、自らの言葉で人の心を動かし、望む現実を創造する力を手に入れたいなら。ぜひ読み進めてみてください。
それでは、始めましょう。
ストーリーは「感情」を動かす
どのような物事も「本質」や「目的」を理解することで、表面的なテクニックや情報に振り回されることなく、重要なポイントを押さえるべくして押さえられるようになります。
では、人の心を動かすストーリーの本質はなんでしょうか?
決して面白い話を作ることではありません。 それは「感情を起点に、聞き手を変化へと導く」ことです。
現代の情報社会において、人々はあなたの文章を「読まない」「信じない」「行動しない」という前提(3NOT理論)を持っています。 役立つ情報を並べるだけでは、この分厚い壁を突破することは不可能です。
著者は、この状況を打破する唯一の方法がストーリーの力であると断言します。
「AIが普及し、全てのライターがそれを使う時代だからこそ、ストーリーが人間ライターの最大の差別化要因となります」
『人の心に響くストーリーの書き方』(永妻優一 著)
ストーリーは、単なる事実の羅列よりも最大で22倍も記憶に残りやすいことが、スタンフォード大学の研究で示されています。 それは、物語が人間の本能的な感情に直接作用するからです。
書き言葉以前に情報伝達の手段として存在したものがストーリーテリング。そのため私たちの遺伝子は「ストーリー」を聞くと思わず耳を傾けてしまう本能的な性質があるのです。(ストーリーを聞いているとき人の脳波は活性化することが判明しています)
つまり、優れたストーリーテリングができるようになることは、ほぼそのまま「人を引き込む話」ができるようになると言っても差し支えないでしょう。
人の心を動かすストーリーの「価値」とは何か
本書はストーリーテリングの核心を「永妻式バリューストーリー」という概念で解説します。 これは、単なる感動話ではなく、聞き手や読み手の「価値観」を揺さぶり、行動へとつなげるための戦略的な型です。
その構造は、次の3つの要素で構成されます。
- ダメダメ(共感): うまくいかなかった過去の状態
- 価値を上げる: 状況を打破した「新しい知識・スキル・視点」
- 成功する変化: 価値を手にした結果、訪れた理想の現在
まず、うまくいかなかった過去(ダメダメな状態)を正直に語ることで、読者に「これは自分のことだ」と感じさせ、強烈な共感を獲得します。
次に、その状況を打破するきっかけとなった「価値ある情報やスキル」との出会いと実践を描きます。
最後に、その価値によっていかに人生が好転したか(成功・変化)を具体的に示すのです。
この型によって、あなたが提供するスキルや商品の価値が読者の記憶に深く刻まれ、単なる情報が「自分も変わりたい」という強烈な動機へと昇華します。
ビジネスにおいて大切なのは、目的やターゲットに適した「正しいストーリー」を使うことです。
『人の心に響くストーリーの書き方』(永妻優一 著)
誰でも「人を動かす物語」が書ける永妻式ストーリーテンプレート
本書の最大の魅力は、そのフレームワークが驚くほどにシンプルで、誰にでも実践できる点にあります。 第3章では、未経験者でも「正しいストーリー」を構築できる、具体的な3つのステップが示されています。
STEP1: ターゲットとゴールを設定する
まず、「誰に、どんな行動を起こしてほしいのか」を明確に定義します。 ターゲットに設定し、その人が抱える「問題」と、望んでいる「目的」を徹底的にリサーチすることが、すべての出発点となります。
STEP2: ログラインを作成する
次に、ストーリーの骨子となる「ログライン」を作成します。 これは映画業界で使われる「物語の要約」を応用したもので、以下のテンプレートに当てはめるだけで、物語の軸が定まります。
〇〇(悩み)だった人が 〇〇(自分の価値を上げたいもの)によって 〇〇(理想の現在)になった
『人の心に響くストーリーの書き方』(永妻優一 著)
このテンプレートこそが、あなたの体験談を、読者の心を動かす「価値ある物語」へと変換する、魔法の設計図です。
STEP3: 「オアフの法則」に沿って執筆する
最後に、作成したログラインに肉付けをし、読者の感情を揺さぶる物語へと展開させます。 その際に使うのが、あらゆる物語に共通する「OAF(オアフ)の法則」 です。
この3ステップを踏むことで、誰でも論理的かつ感動的なストーリーを、才能やセンスに頼ることなく構築できるようになるのです。
ヒーローズ・ジャーニー(12ステップ)/ジョゼフ・キャンベルトが著書『神話の法則』で提唱
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日常世界(主人公の日常描写)
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冒険への誘い(冒険に挑む動機や問題の提起)
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冒険の拒否(主人公が冒険に向かうことをためらう)
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賢者との出会い(メンターから指導や助言を受ける)
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戸口の通過(第一関門突破)(冒険の世界へ踏み出す)
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試練・仲間・敵との出会い(様々な障害や人物との遭遇)
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最も危険な場所への接近(最大のリスクに近づく)
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最大の試練(苦難)(「死と再生」を象徴する大きなトラブル)
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報酬(成果の獲得)(成長やご褒美、知恵を得る)
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帰路(元の世界へ戻ろうとする)
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復活(決定的な変化、「最後の試練」)
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宝を持っての帰還(変化した主人公が宝や知識を持ち帰る)
未経験から人生を変えた、物語の実例
このフレームワークの威力について、本書では、その再現性の高さを示す、数々の具体的な事例が紹介されています。
- あるシナリオライターは、このテンプレートを導入することで執筆速度が2倍に向上し、制作したYouTube動画は30万回再生を突破しました。
- 0代からSNS発信を始めた方が、自身の物語をプロフィールに組み込むことで多くの共感と信頼を獲得し、商業出版の夢を実現した
- あるアーティストは自身のプロフィール文を物語の型に沿って書き直した結果、海外での個展開催のオファーが舞い込んだ
など。
これらの事例に共通するのは、「戦略的に設計されたストーリー」が人の心を動かし、具体的なチャンスを引き寄せたという事実です。
日常を「物語の宝庫」に変える3つの習慣
では、人を動かす物語の力は、どのように磨けばよいのでしょうか。
著者は、特別な体験は不要であり、日常の中にこそ物語の種が眠っていると説きます。その力を継続的に磨き上げるための、具体的な3つの習慣が提案されています。
これらがストーリーテリングの能力を伸ばす秘訣であると語られています。
この3つの習慣を実践することで、あなた自身の日常が、人を動かす言葉を紡ぎ出すための、尽きることのない源泉へと変わっていくのです。
まとめ:あなたの言葉を「人生を変える武器」にするために
永妻優一氏の『人の心に響くストーリーの書き方』から、あなた自身の経験や想いを、人の心を動かし、人生を切り拓くための「武器」に変えるための、実践的な戦略とフレームワークをご紹介してきました。
「反応が取れない」という無力感から解放され、再現性のある言葉の力を手に入れたい。そう願うすべての人にとって、本書で解説されているストーリーテリングの技術は確かな指針となるでしょう。
明日からできる最初の一歩は、今日起きた出来事の中から「最も感情が動いた瞬間」を一つだけ選び出し、それを「日常・冒険・未来」の3つのパートで語ってみることです。
その小さな一歩が、あなたの言葉を、そしてあなたの人生を変える確かな始まりになります。
言葉の「原理原則」を探求する旅へ
今回ご紹介した「物語の型」のように、人の心を動かす言葉には、必ずと言っていいほどその背後に普遍的な「原理原則」が存在します。
表面的なテクニックを追いかけるだけでは、決して本質的な力は手に入りません。
なぜ、その言葉は人の心を動かすのか。 なぜ、その文章は記憶に残り、行動を促すのか。
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ここでは、現役のコピーライターとして活動している私が、日々の体験や思索、試したアイデアとその結果など、よりディープな内容をお届けしています。
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